裏読み読書

本を読んで感じることは人それぞれ。

モンテ・クリスト伯 読書メモ80

司祭。

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泣くことすら出来ないマクシミリアン。

悲しみが喉を縛り上げる。

言葉にならないうめき声。


激しい嘆きの波を乗り越え、彼はようやく犯人に対する罪の追及を思い立つ。

確固たる意志でヴィルフォールに詰め寄るマクシミリアン。

言うべき事を言い切ったマクシミリアンは、そこで初めて涙を流す。

この涙。

デュマは、悲しみを知っている。

人は大きな悲しみに出会うと簡単には泣けない。
この描写には、マクシミリアンの悲しみが良く現れていると思う。


愛しい人を失った。

恋人たちにとって、それは世界の崩壊を意味する。


光の喪失、大地の消失。

真っ暗な何もない闇の中で、恋人と過ごした光の日々を思う。

悲しみを抱きながら、マクシミリアンは邸を後にした。


さあ、ここからが面白い。

葬儀のため、隣に引っ越してきた司祭が呼ばれる。その人こそ、司祭の姿をしたモンテ・クリスト伯。

悲しみ満ちるヴァランティーヌの部屋で、祈りを捧げる司祭。
閂をしっかりとかけ、ノワルティエ老人に真実を告げる。

幸福そうなノワルティエの描写を読むと、こちらも嬉しくなる。



正しき者は幸福になれ!!

私には、そんなデュマの声が聞こえる気がする。



アレクサンドル・デュマ作、山内義雄訳、「モンテ・クリスト伯」七、岩波書店。