裏読み読書

本を読んで感じることは人それぞれ。

モンテ・クリスト伯 読書メモ81

チェスの一手
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場面は変わりダングラールとモンテ・クリスト伯の会話。


何故かこの二人のやり取りは、復讐する者される者という関係でありながら、ユーモアを感じさせる。


モルセール、ヴィルフォールとの緊迫したやり取りとは異なるダングラールの滑稽さ、ここに注目したい。


伯爵の対応も、掌で転がす様に自在で、確実。

寸分の隙もない。


巧みにダングラールの自尊心や見栄を煽り、思い通りの行動をとらせる。

その合間に見せる仕草がまた面白い。

じっと天井の金細工を眺めて待つ。


この一文で目に浮かぶのはソファーで姿勢の良い肩を背もたれに預け、悠々として天井を眺める。
つまり、顔を上げている伯爵の姿。

既に圧倒的勝利の姿が印象的だ。

一方煽られたダングラールは、必死に自分の力量を示さんが為に、下を向き鷲ペンを走らせている。

つまり、敗北を示している。


この構図、漫画化すれば絵になる。


かつて、ダンテスは船長に、その会計係にはダングラールが決定していた。

その本来の主従の姿が、奇しくもこの瞬間に再現されている。


嫉妬のあまり、過去のダングラールはその事実を受け入れられずダンテスを牢獄へ送った。
しかし、長き時を経てダンテスは、その奪われた地位を取り戻した。

この僅か数行の描写。

しかし、ダンテスにとっては、長らく待ち焦がれた瞬間なのだ。

勝利、そしてこの後に起こる全てを予測した余裕。

ダングラールの精一杯の見栄である支払い手形。

伯爵は、王手となるチェスの駒を動かす。


巧みな話術。

ダングラールの性格と、知能を見抜き抜いた策略。

ダングラールは、それとは知らずノコノコと罠の中へと自ら進み出る。


そして、急かすように伯爵と入れ違いに訪問するボヴィル。

あれほど本心を見せない伯爵が、ボヴィルとすれ違い様に微笑を見せる。
エデとの一件以来、伯爵がより人間らしく蘇生しつつある証拠がここにもある。



計画は成功。

遠退く馬車の音。

ダングラール「男爵」の終焉。